ヨガの基本動作の一つ、上体を左右にねじること。背中や腰まわりのコリを解消し、内臓をマッサージする効果があると言われています。ただし、間違った方法ですると肩や腰、胸を痛めてしまうことも。ここでは、気持ちよく上体をねじる方法をわかりやすく解説します。背中も肩や腰と同じように凝りやすいところ。そして、背骨は体の中心軸。しっかりケアしてくださいね。
電化製品の進化や生活の利便性により、私たちは上体をねじる動作をあまりしなくなりました。それにより、背中や腰の筋肉が強張り、コリが起こりやすい状況を作っています。姿勢にも悪影響を及ぼしかねません。ヨガの上体をねじる動作は、以下の効果があると言われています。
ねじる動作は背中(脊柱)や周辺の筋肉を左右に回して、ストレッチします。それにより、背中の筋肉の強張りが解消され、脊柱の可動域が改善し、以下の効果があると言われています。
- 背中の筋肉の強張りを解消
- 脊柱の可動域を広げる
- 背中全体の柔軟性向上
- 姿勢の改善
また、ねじりのポーズを定期的にしていると、背中全体の柔軟性が向上し、姿勢の改善につながると言われています。ねじりのポーズは姿勢の悪さからくる腰痛の予防にも効果的です。
ねじる動きは腹部を締め付けて圧力をかけます。消化器系の内臓に穏やかな刺激を与え、以下の効果もあると言われています。
- 内臓への刺激による消化機能向上
- 蠕動(ぜんどう)運動の活性化
- 便秘解消に役立つ
デスクワークなど、長時間椅子に座ることは腸を硬くさせ、胃や腸の蠕動運動が低下すると言われています。日常生活で座ることが多い人は、ねじるポーズで胃腸の蠕動運動を促してくださいね。
ただし、食後すぐにヨガをすることは厳禁です。胃に余計な負担をかけ気分が優れなくなることも。食後1時間半以上経ってから行ってくださいね。
体への効果以外にもする目的があります。ポーズにねじりを加えて難易度を上げること。これにより、元のポーズをしやすくする効果があります。
例えばハイランジのポーズや立位のポーズなどでねじるとき。再度、元のポーズをすると、そのポーズがしやすくなった経験はありませんか。ねじることで元のポーズに対する余裕が生まれ、より集中しやすくなります。
ねじるポーズによるむくみ解消や内臓の活性化は、残念ながら限定的です。内臓の血流改善効果も同様です。
ヨガによるデトックスは、太陽礼拝など複数のポーズを連続してとることで体を温めて、体全体の血行や巡りをよくすること。個々のポーズによる直接的な効果は証明されていません。「これをすれば大丈夫!」のような、過度な期待は避けましょう。
また、体幹強化やウエストシェイプの効果も限られており、筋肉を緩めて活性化させる程度です。筋力アップやウエストの引き締め効果は、プランクポーズやチャトランガダンダーサナ(四肢のポーズ)など、体幹を鍛えるポーズや筋トレ、ピラティスなども取り入れることをおすすめします。
そして、自律神経が整う効果については呼吸によるものです。ヨガはポーズと併せて呼吸を促します。呼吸で横隔膜を動かすため、横隔膜による自律神経を整える効果が高いと考えられています。
ポーズをとるとき、ねじる側だけで動かそうとしていませんか。また、胸や顔を突き出したり、背中を曲げた状態でねじると背骨に負担がかかります。以下のポイントをおさえて、より効果的なねじりのポーズをしましょう。
ねじる順番(下から上に向かってねじる)
ウエスト→胸→肩、胸→首の順に徐々にねじること。竜巻のように下から上に向かってねじるイメージでしましょう。
左右両側を使ってねじる
片側だけと動かそうとしないこと。回転ドアのように両側を使います。ねじる側は後ろへ引くように、反対側は前に押されるように体を動かします。思ったどおりできないと無理に片側だけでしがちです。肩や腰に負担がかかるので気をつけましょう。
中心軸(背骨)はうごかさない
猫背や反り腰に気をつけて、背筋を上に引き上げましょう。背骨が丸まっていたり、反れていたり、前後左右に傾かないように注意します。
骨盤を安定させる
ねじりにつられて骨盤も動くとポーズが安定しません。座位のポーズでするとき、頑張り過ぎるとお尻や座骨が床から離れるので気をつけましょう。
ただし、がっちり固定すると骨盤の中心にある仙腸関節に痛みが生じる場合があります。実際、骨盤は若干動きますが、これは仙腸関節が動きやすくするために起こるもの。座骨やお尻が浮かない程度で骨盤を安定させましょう。
呼吸を意識する
ねじりのポーズがうまくできないときは、呼吸に合わせて動かすのがポイント。息を吸う時は背中を持ち上げ、吐くときにねじる。呼吸にしたがってゆっくりとねじりを深めます。
これらのポイントを意識しながらおこなうと、より効果的にねじりのポーズができると思います。
リラックス系ヨガでよくする安楽座のねじりのポーズ(パリブルッタ スカーサナ)を例に、実際の手順を見ていきましょう。椅子に座りながらでもできるポーズです。
あぐらになり、両手はひざの上、もしくは、体の横につける
胸と顔は正面を向き、頭が肩より前に出ないように気をつける
頭を後ろに引いて、耳が肩の位置にくるようにする
ねじる側の手は斜め後ろに、反対側の手はねじる側のヒザの上に置いてから、
ねじる側だけでなく、反対側も後ろから押されるようにねじる
胸が縮こまっていたら、軽く引き上げて胸と顔を正面に向ける。
ろっ骨の突き出し、背筋の反りや丸まり具合を確認する。(反り腰、猫背に気をつける)
ねじる側の胸は後ろへ引くように、反対側は後ろから押されるように動かす
肩が上がっていたら、肩は力が入らないように脱力する
同時に、無理に片側だけでねじっていないか確認する
ねじる側は後ろへ引くように。反対側は後ろから押されるように肩を動かす
中心軸がぶれていないか、顔が正面を向いているか確認する
頭全体が肩より前にこないように、あごや頭を後ろに引き耳が肩の位置にくるようにする
顔は下や上に向かずに正面のままにする
ねじり切ったら、この体勢で呼吸を続けてポーズをキープ
息を吐きながら、ゆっくりとねじれをほどいて正面を向きましょう。
軸がぶれずにウエストからねじると、まっすぐな一本線の軸を感じ、雑巾をしぼるような感覚が生まれます。ねじりかたを覚えたら、今後は1呼吸でねじるようにしてくださいね。
ねじる動作は体に多少の負担をかけます。間違ったことをするとケガや疾患の悪化につながるので、以下のことを心がけてくださいね。
姿勢、中心軸に気をつける
猫背、反り腰のままでしていると負荷がかかり腰を痛める原因に。息を吸うタイミングで中心軸がぶれていないか、前後左右に傾いていないかチェックしましょう。
立位のポーズはねじりにくいことがある
立位のポーズは座位のポーズや仰向けのポーズほどねじれません。お尻や骨盤が動きやすく骨盤が安定しないため、その分ねじりにくくなっています。無理しないのが鉄則です。
ねじる角度にも限度がかる
推骨には可動域の限界があります。柔軟性が向上しても最大で115度ぐらいまで。顔が真後ろを向いたり、肩が90度以上回ることはありません。 それに背中や体側の筋肉のコリがあったら、さらにねじる角度は浅くなります。脊柱のためにも無理しないことが大切です。
健康状態に応じて控えること
以下の疾患がある人は避けるポーズです。実践するときは、かかりつけの医療機関にご相談ください。
- 重度の側彎(そくわん)症、椎間板ヘルニアがある
- 脊柱や仙腸関節に痛みや疾患がある、腰痛がひどい
- 背中や腹部、ろっ骨などのケガがある、または回復中
- 術後回復期中である
- 逆流食道炎、胃潰瘍、過敏性腸症候群など消化器系の疾患がある
- 妊娠中である(妊娠中記~後期、胎児を圧迫させるため)
- 高血圧である(腹部圧迫により、血圧を上昇させるため)
- 呼吸器系の疾患がある(腹部圧迫により呼吸が制限されるため)
ねじりのポーズは、おもにあおむけや座位でする背中や体側のコリをほぐすものと、立位でするオリジナルポーズの難易度を上げたものがあります。
ポーズ名 | 効果 | ポイント |
パルブルッタ スカーサナ (安楽座のねじりのポーズ) | 背中、腰のコリを 緩和 便秘の改善 | 初心者向けのポーズ この記事で解説しているとおりにしましょう |
アルダ マッチェンドラーサナ (半分の魚王のポーズ) | 背中、腰のコリを 緩和 便秘の改善 | ひざを立てた足は足裏、膝を曲げた足は足先の側面で 床を押すとポーズが安定する 胸は持ち上げ、体側は長く保ったままポーズをとる お尻が浮いたり、両座骨が床につかないときは、 浮いた部分にブランケットなどを敷く ひざを曲げずにおこなってもOK |
ジャタラ パリヴァルタナーサナ (ワニのポーズ) | 背中、腰のコリを緩和 お尻と太ももの 強張りをほどく | 両手、両肩はしっかり床につける のばしている側の肩が浮かないようにする 曲げたひざが床につかないときは、 折りたたんだブランケットなどを敷くと楽になる |
パリブルッタバラーサナ (針の糸通しのポーズ) | 肩、肩甲骨、体側の コリをほぐす | 体重が片側に偏らないように両ひざと両足に体重を均等にのせる 下の手を前にだし、肩、肩甲骨の間を伸ばす 床についている肩が痛いときは、タオルを敷いて痛みを和らげる わきや肩の側面を伸ばしたいときは、上の手は頭上の先へ下ろす 肩の前側を伸ばしたいときは、 ひじを曲げて手を後ろに回し手の甲を背中につける |
ポーズ名 | 効果 | ポイント |
パリブルッタ ウトゥカタナーサナ (ねじった椅子のポーズ) | 背中、体幹、太ももを 強くする | ひざが足より前に来ないように、お尻を後ろへ大きく突き出す (ひざに重心が乗らないようにする) ひざは内側にはいらないように、太ももを強くして、 足先とヒザは正面に向ける(足幅は腰幅程度) 下腹部に力をいれて、上体を安定させる ひざとひじの押し合う力の反動を使わずに、ウエストからねじる |
パリブルッタ パールシュヴァコーナ (ハイランジのねじり) | 体幹、足腰の強化 股関節の柔軟性アップ バランスの向上 | 下腹部に力をいれて、上体を安定させる 後足のかかと後ろに押し出して、ひざを伸ばす (伸ばしすぎに注意) 両足の太ももの内側を寄せ合うように強くすると ポーズが安定する 両手を押し合いながら、上体を引き上げてねじる |
パリブルッタ トリコナーサナ (ねじった三角のポーズ) | 体幹、足腰を強くする 股関節の柔軟性アップ バランスの向上 | ウエストをねじりながら上体をたおす 両太ももの内側を寄せ合うように強くするとポーズが安定する ひざを伸ばしすぎないように気をつける(1ミリ緩める程度) 手をつく位置は上体のたおす角度に合わせる (太もも→すね→足首→床の順) ヨガブロックをおいてするときは、 前足の内側(ふくらはぎの横)におく |
ねじるポーズはバリエーションとして使われることが多いので、ついねじる動作を忘れがちです。
以下のことを忘れずに行ってくださいね。
ねじりのポーズは、正しく行うことで背中や腰のコリを解消し、姿勢改善の向上に役立ちます。自分の体の状態に合わせて、無理のない範囲で実践してくださいね。
定期的に行うことで柔軟性が向上します。まずは、座位やあおむけのポーズから始め、徐々に立位のポーズにチャレンジしてみてください。
なお、ねじりのポーズに限らず、ヨガの実践には個人差があります。自分の体調や柔軟性に合わせて行うことが最も重要です。無理をしないヨガを目指してくださいね。