ヨガは後屈のポーズが数多くあります。なじみのあるものは、レッスンの始めにするキャットアンドカウ、太陽礼拝のコブラのポーズなど。
ただし、間違った体の使いかたをすると背中、肩を痛めてしまう原因になりかねません。ここでは正しい後屈のコツを解説します。まずは、やさしいポーズから修正してくださいね。
体を反らすと気持ちが前向きになると言われています。気分をリフレッシュしたいときにしてくださいね。
後屈は、背中、肩、首まわりの筋肉を働かせ、上体前面の筋肉を伸ばします。それにより、以下のような効果があると期待されています。
姿勢改善につながる
後屈は胸を張る動きをします。背中を丸くし、胸を縮こませる猫背の姿勢から胸が持ち上げひろげます。その動きに連動して脊柱が元の位置へ。また、下腹部に軽く力が入るクセもつくため、腰が丸くなることを防ぎます。
さらに、肩甲骨も連動するため肩先の向きが変わります。肩の前側の筋肉が使われて巻き肩が改善することも。これらのことから姿勢の改善に効果があると言われています。そして、女性にとっては嬉しいバストアップ効果も期待されています。
呼吸がしやすくなる
体を反らす動きは、呼吸筋とよばれる筋肉の一部、肋間筋(ろっかんきん)、腹横筋(ふくおうきん)、腹斜筋(ふくしゃきん)、腹直筋(ふくちょくきん)を伸ばします。
また、背中の筋肉、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)、首や肩の筋肉の一部、僧帽筋(そうぼうきん)、半棘筋(はんきょくきん)などを使って背骨を維持します。
これにより、肺や横隔膜の動きがしやすくなり、呼吸がしやすい状態に。猫背の姿勢で強張っていた胸の筋肉や、使わなくなっていた背中や首の筋肉が活性化されます。
また、大きな呼吸がしやすくなると基礎代謝があがります。痩せやすい体に近づきますよ。
胸を開くことで気持ちが上向きに
ヨガでは、後屈で気持ちが上向きになることを重視しています。呼吸がしやすくなり、姿勢が整う。これが気持ちをポジティブにさせると説いています。
呼吸が浅いと体がうまく機能しないと考えられるほど、呼吸はヨガにとって大切な要素。呼吸と心はつながっていると言われています。
後屈は、体の使いかたによって効果が半減し体を傷めます。いくつか気を付けるところがあるので、おうちで練習するときは、以下のことに気をつけてくださいね。
腰だけで体を反らそうとしている
難易度が易しいポーズ、キャットアンドカウやコブラのポーズだとあまり感じませんが、ラクダのポーズや弓のポーズなど、強度を感じるポーズでは、腰を痛める結果につながります。
後屈は「腰を反らす」ではなく、「胸を開く」動きであること。胸を開くことは、「肩を背中側に引いて、肩甲骨を寄せる」ことです。肩が胸より前にこないように注意してください。そして、背中は、上に伸ばすイメージで反らします。
胸を開く動きは鏡の前で確認できます。気になったら実践してくださいね。
1、両手を前に出す。
2、ひじを曲げてわきをしめる。
3、両手を体側と同じ位置まで横に広げる(無理にひろげなくても大丈夫)
脊柱と脊柱の間を広げるイメージで背中を上に伸ばす
これをすると、肩甲骨どうし寄せ合い肩がすこし後ろに引きます。それと同時に、胸が前に出て、広がっていきます。
また、反り腰の人は、みぞおちがを前に突き出しやすいので気をつけましょう。胸と一緒にみぞおちも前に突き出そうとします。下腹部に力をいれて、突き出ているお尻を引っ込めるように骨盤をまっすぐにします。ろっ骨やみぞおちのでっぱりを解消してから、胸を開いてくださいね。
いきなり後屈のポーズをしない
後屈は、体の動きが悪い状態でするとケガを招きます。必ず体が温まってから練習しましょう。注意を払っても、体を反らすことは背中に多少の負荷を与えます。必ず、体の前面、側面、お尻や太ももなどのこわばりをほぐして、動きやすくしておきましょう。
無理しないこと
後屈も無理は禁物。気持ちよくできていることを重視してくださいね。上達に時間を要することを忘れないでください。長く続けているとそのうち体に変化が訪れます。
また、残念ながら後屈はする人を選びます。妊娠中の人、高血圧や狭心症の人は極度なものは避ける。両手を腰において、軽く反らす程度にとどめておきましょう。また、椎間板ヘルニア、関節炎、消化性潰瘍をお持ちのかたは避けるべき運動です。どうしてもしたいときは、かかりつけのお医者さんにご相談くださいね。
後屈には段階を踏んで練習することが大事です。以下の番号順のように練習をすすめてくださいね。
①胸だけを開くポーズ
②腹圧をかけながら反らすポーズ
③角度を深めて反らすポーズ
1、胸だけを開く後屈
代表的なものは魚のポーズ。あおむけになり、ひじと手で体を支えながら胸をひろげます。わきを締め、両手、肩、肩甲骨を寄せ、上体が持ち上げます。
2、腹圧もかけて後屈するもの
代表的なものは、コブラのポーズや弓のポーズなど。恥骨や下腹部を床に押しつけて腹圧をかけます。腹圧で腰をまもりながら上体をおこします。肩をうしろに引き、肩甲骨を寄せて、胸をひろげます。
3、後屈の角度を深めてするもの
代表的なものはラクダのポーズです。ひざ立ちになるとき骨盤も立たせます。そのあと、骨盤を前に押し出しながら、上体をたおします。最後に胸を広げます。
ポイントは太ももの付け根や下腹部を前に出すとき、お尻の割れ目を引っ込めることです。
後屈のチャレンジポーズ、ブリッジ(ウールドヴァ ダヌラ―サナ)について
あおむけでおこなうブリッジポーズは、骨盤の傾き、胸を開くことを同時にします。太ももや足の付け根、下腹部、おなか、胸、前面全体を外へ押し出すイメージでおこないます。
なお、このポーズは、体をそらす強度が高いため、以下のことができないと、腰、手首、首などを痛める恐れがあります。
ブリッジを挑戦したい人は、以下のことができるか冷静に判断してくださいね。
- ラクダのポーズで手が足裏にぴったり触れるほど、後屈が深まっていること
- 後屈で腰に負担をかけすぎていないこと(胸、下腹部、ももの付け根を押し出しているか)
- プランクポーズからダウンドックに戻れるくらいの腕の筋力があること
- 手首を反して、腕が耳より後ろにすることができるか
- 手首が90度くらい反らすことができるか
背中を反らすポーズをしたら必ずしてほしいことがあります。それは、背中の緊張をほぐすクールダウンの時間をいれること。
背中を緩めるチャイルドポーズをするか、背中を伸ばすダウンドックで筋肉の緊張をほぐします。後屈をするごとにこの時間を入れてもかまいません。長めに時間をとって背中をリラックスさせます。
また、深い前屈のポーズやねじりのポーズは直後にしないこと。脊柱に負担をかけます。どうしても合わせて練習したいときは、時間をおいて、背中の緊張がほぐれてからおこないようにしてくださいね。
体を反らすことは腰を悪くすることではありません。正しい反らせかたで背中や腰の負担は減らせます。胸を開いて、背中を伸ばす意識をもっておこなってください。
まずは、コブラのポーズやキャットアンドカウなどから修正しやすいポーズからしていきましょう。猫背さんにはおすすめの後屈。ぜひトライしてくださいね。