ヨガをはじめると苦痛に感じる前屈。10種類以上のポーズがあるくらい、ヨガにとって大事な要素です。でも、体が硬い人は苦手意識が強いですよね。
それでも、コツを知れば誰でも手が床につきます。できるようになると、ポーズの幅が広がって、体の感じかたも変わります。そして、思わぬ変化に喜ぶことも。これを機に前屈を深めてみませんか。苦手なポーズを克服すると新たなヨガの景色が見えてきますよ。
ヨガで前屈する理由は2つあります。1つはお尻と太ももの裏側の筋肉をほぐして柔らかくすること。
これらの筋肉がほぐれると股関節の可動域が広がる。また、関節の動きがよくなり、腱や筋肉も無理せず動かせる。股関節には上体と足をつなぐ筋肉、腸腰筋があります。この筋肉も動かしやすくなり、日常生活でのつまずきや転倒が減る。そして、ケガの防止につながります。
実は、前屈がしづらい人は腰痛で悩むことが多いと言われています。お尻と太ももの筋肉が強張り、硬くなっていませんか。この辺りの筋肉が硬いと股関節が動かしづらくなります。そのため、腰で体を動かしてしまいます。
また、太ももの前側が発達している人は裏側が硬い傾向にあります。姿勢、体幹の弱さなど、いくつかの理由はありますが、共通点でもあります。
そして、もう1つはヨガの練習が向上すること。
前屈が深まると股関節が動かしやすくなり、柔軟性も高まります。すると、戦士のポーズや三角のポーズで足の幅が広くなり、脚を伸ばすポーズで気持ちよく伸びる感覚が生まれます。
また、お尻の動きが良くなると骨盤の位置の調整がしやすくなります。たとえば、ダウンドック(アド ムカ シュヴァーナ)の場合。上体と一緒に骨盤をたおせるようになり、お尻と太ももが気持ちよく伸びます。そして、ひざを曲げる必要がなくなる。このように、ヨガの上達を実感できる機会が増えてきます。
このほかにも、足の背面全体の血液やリンパの流れが促進されるため、足のむくみの改善、代謝が良くなるなど、身体的に嬉しい効果が実感できると思います。
前屈ができない人には3つの特徴があります。当てはまっている人は直していきましょう。鏡の前など、自分が反射して移るところで確認してくださいね。
お尻、太ももの筋肉が硬い
硬い筋肉はつっぱり感が出て伸ばしにくくします。それが上体をたおす妨げとなり、腰を曲げるように体が動きます。まずは、ひざを曲げておなかと太ももをぴったりつけてすること。両方をつけることで腰から曲げることがなくなります。
また、お風呂上りに緊張している筋肉をほぐすマッサージも効果的です。筋膜や筋肉のこわばりをほぐすだけでも、変わってくると思います。
腰を曲げるクセがある
当たり前ですが、体をたおすとき腰からすると自然に背中が丸まります。骨の構造上、背骨を曲げる角度には限界があり、それ以上すると背中全体が丸まってしまいます。そして、お尻や太ももを伸ばす前に背中が悲鳴を上げ、前屈が浅い状態で止まります。
その理由は骨格の形成にあります。背中は推骨という、だ円形の南京錠のような形状の小さい骨が27個連なって形成されています。推骨の可動域はほとんどありません。
それに比べて、股関節は球状に近い形をした大腿骨頭(太ももの骨の先端)と寛骨臼(骨盤の外側にあるくぼみ)で形成されています。そのため、骨がつっかえることがなく、上体をたおせる仕組みになっています。
前屈するときは、腰に手を当てて腰が伸びていることを確認しながら、ももの付け根から曲げようにしてくださいね。
体が緊張したままで前屈する
苦手意識を持っておこなうと心と体が構えるので緊張します。緊張は筋肉を硬直させます。体を緩める気持ちで吐く息に合わせてしましょう。吐く息は体を緩める効果があります。
また、お風呂上りにするのも効果的です。温水で体も心もほぐれています。これで、前屈が深まる人もいます。
お分かりと思いますが、この3つと反対のことをすればフォームは改善します。息を吐きながら気持ちを緩め、股関節から上体をたおして、お尻と太ももを伸ばすこと。
前屈も無理は禁物。ケガをしかねます。上体のたおす深さを気にせずに、股関節から曲げることを意識してくださいね。1日1ミリ伸ばす気持ちで、痛気持ちいいと感じるところまでにしてください。
おうちでできるポーズを例にして解説します。立位前屈(ウッターナーサナ)と、長座位体前屈(パスチモッターナーサナ)で説明します。苦手な人は体に負荷がかかりにくい立位前屈からしてみましょう。
立位前屈で深める
ポイントは脚の前に衝立やベビーゲートがあることを想定して前屈しましょう。このイメージを持ちながらすると、自然と股関節から上体をたおせるように。
このとき、腰を曲げずに少し前のめりになります。上体が床と並行になったら、さらに上体をたおして深めていきましょう。ひざに手を置くときは、手で強く押し付けないように気をつけてくださいね。
太ももの前側に両手をおき、股関節から直角に体を曲げて前屈。
お尻と太ももを近づけながら、ひざ、ふくらはぎ、足首と徐々に手をおく位置を下げる。
足首まで手が届くようになったら、両手で両ひざを抱えて、お尻を上に持ち上げる。
(おなかと太ももはぴったりつける)
お尻を持ち上げるときは吐く呼吸にあわせる。
バランスを崩さないように、ふくらはぎ、足首は後ろに引く。
ひざの伸ばしすぎに気を付ける(靭帯に負荷がかからないように。
立位前屈がきつい人は 上体をたおすときにつっぱりを感じる人は、壁を使った簡易ポーズを練習しましょう。お尻と太ももの柔軟性に合わせて、上体のたおす角度を徐々に小さくします。
このとき、上体の力が抜けると肩に負担がかかります。体幹で軽く上体を支えることを忘れずにしてください。壁をつたって90度くらいに曲げられるようになったら、立位前屈で練習しましょう。
長座位体前屈で深める
その1
長座位体前屈のポイントは骨盤を立てることです。立てた骨盤ごとたおして、お尻と太ももの距離を縮めます。
長座になり、両手を骨盤に当てて指先を床につけます。床と垂直になるように骨盤を起こしてから上体をたおしましょう。
しづらいときはひざを曲げます。
その2
もう1つは、お尻を少しずつずらしながら前屈します。顔がひざに近づいてきたら、かかとを前に出してひざの角度を広げていきます。
ある程度できるようになったら、両手で足指をつかんでさらに伸ばしましょう。ひざの伸ばしすぎに気を付けながら、かかとは前に押し、お尻を後ろに引いていきます。常におなかと太ももはつけたままです。
ストレッチとケガは紙一重であることを忘れないでください。無理は禁物です。限界を超えた練習はケガに直結します。ケガすると、2~3週間ヨガの練習ができません。積み上げたものを一からやり直すのはもったいないこと。1日1ミリ伸ばす気持ちがとても大切です。
前屈で股関節が動きやすくなると、いつもするポーズが変化します。足に負荷がかかりケガすることも。立位のポーズでは上体の重みが増し、開脚のポーズではふとももの内側に負荷かかかります。柔軟性と併せて足や体幹の筋力も強化することをおすすめします。
気持ちよくするのがヨガの大前提。長いスパンで取り組んでくださいね。